裁判員制度とは、一般国民が刑事裁判に参加することにより、裁判に民意を反映させ、裁判を国民にとって身近なものとすることで、 国民の司法に対する理解と信頼を深めることを目的とした新司法制度です。

しかし、裁判員制度の導入によって国民の司法参加が円滑に進み、より良い社会の構築がなされていくためには、国民の一人ひとりが同制度の意義と価値をしっかりと理解しておく必要があります。

裁判員制度は2009年にスタートし、有権者であれば裁判員に選ばれる可能性があります。

裁判員の具体的な仕事内容と役割をあらかじめ勉強し、心構えをしておきましょう。

裁判員が選ばれるまでの流れ

STEP1 裁判員候補者名簿が作成される

 選挙管理委員会がくじで作成した名簿を基に、各地裁が裁判員候補者名簿を作成する。

 前年の秋ごろに翌年の候補者が決定することとなる。

STEP2 候補者に通知

 候補者名簿に記載された人には通知が届く。

 辞退の理由があるかどうかなどを確認する調査票も送付される。

 候補者は調査票を返送する。

 調査票の内容に基づき、辞退事由が認められた人、裁判員になれないと判断された人は、裁判所に呼ばれることはない。

 前年度中にこの作業が完了する。

STEP3 事件ごとにくじで候補者を選出

 事件ごとに候補者名簿の中から、くじで50〜100人ほどの裁判員候補者が選ばれる。

STEP4 呼出状の送付

 裁判の6週間前までに、裁判員候補者に呼出状が送付される。

 呼出状には選任手続期日が記載されている。

 質問票も同封されており、返送し、辞退が認められた人は呼び出しが取り消される。

STEP5 選任手続

 裁判の当日、候補者は裁判所へ行き、選任手続きが行われる。

 裁判長が候補者に対し、適性を見極めたり、辞退希望の理由を聞いたるするための質問を行う。

STEP6 裁判員の選任

 6人の裁判員が選ばれる。

 必要な場合は補充裁判員も選ばれる。

 基本的に午前中で選任手続が終了し、午後に審理開始となる。

裁判員の仕事

@刑事事件の法廷に立ち会う

 裁判員は公判に立ち会う。

  証拠書類の取り調べ、被告人、証人への質問が行われる。

  裁判員が質問することもできる。

A事実認定、量刑の評決

  被告人が有罪か無罪か、有罪ならどのように処するかを、裁判官と評議し、評決に至る。

  意見が全員一致とならなかった場合の評決は多数決となる。

  多数決では、裁判官、裁判員のそれぞれ1名以上の賛成が必要となる。 

B判決宣告に同席

  法廷で裁判長が判決を宣告することにより、裁判員の役割は終了する。

裁判員制度に関するQ&A

Q法律の専門家ではない一般人が参加して公正な裁判ができるのか?

 裁判員が行うのは「事実認定」と「量刑」の判断。事実認定に関しては様々な証拠や証言などを基に、常識的な感覚と照らし合わせて判断するので、専門的知識がなくてもできるといえる。量刑に関しても、必要であれば裁判長が同様の事件の判例を示してくれる。法的な判断は裁判官が行うので裁判の質が落ちる心配はあまりない。様々な人生経験を持つ裁判員の意見をうまく取り入れ、これまでより深みのある評議にできるのかどうかは、蓋を開けてみないと分からないところもある。裁判官がレールを敷きすぎるのも良くないが、裁判員に法的知識を何も与えないのも良くないので、バランスが難しいところだ。

Q裁判員制度の対象となるのはどんな事件か?

 地方裁判所で行われる刑事裁判のうち、一定の重罪事件を扱うもの。殺人、強盗致死傷、傷害致死、危険運転致死、身代金目的誘拐などが該当する。仮に平成18年で見ると、裁判員制度対象事件数は、全刑事事件裁判(第一審)の2.9%にあたる3111件とされている。

Q裁判員を辞退することはできないのか?

 原則として辞退できない。しかし、「70歳以上の人」「地方公共団体の議会議員(会期中に限る)」「学生・生徒」「5年以内に裁判員や検察事務員を務めた人」「重い疾病などで裁判所へ行くのが困難な人」などが辞退事由として定められており、これらに該当すると裁判所から認められれば辞退できる。

 単に体力や気力に自信がないというだけでは辞退は難しい。また、仕事が忙しいという理由に関しては、重要な仕事で、その人自身が処理しなければ著しい損害が生じると認められれば辞退できる。自営業者であることなどは考慮要素なるだろう。しかし個別の判断となるため、候補者と裁判所の間でトラブルが起こることは想定できる。辞退の基準の明確化と、各企業の協力が不可欠となる。その他、要介護者がいるなどの理由についても、事情や状況に基づいて個別に判断されることとなる。

Q裁判員に発生する義務は何か?

 きちんと公判に出席し、公平誠実に職務を行うこと。評議のときに意見を述べること。また、法廷で見聞きしたことは誰かに話しても問題ないが、評議の秘密や、評議以外で裁判員を務めることによって知り得た秘密(事件関係者や裁判員のプライバシーに関する事項)については、守秘義務を負うこととなり、漏らしてはならない。この守秘義務については、公判終了後も守らなくてはならない。自分が裁判員であることについては、公判中に公にしてはならないが、日常生活の中で家族や親しい人に話すことは禁じられていない。また、過去に裁判員であったことを公にすることも禁じられていない。

Q裁判員は裁判所に何日間行くことになるのか?

 審理日数は事件により異なるが、裁判員裁判では裁判官、検察官、弁護人の三者で公判前整理手続が行わるため、約7割の事件が3日以内に終了すると見込まれている。スピーディな裁判のために可能な限り連日的に開廷されることになっているが、これに関しても、職業などによっては間隔を開けた日程のほうが都合の良い人も多いと考えられるため、難しい問題をはらんでいる。

Q裁判を迅速化することで誤審が増えてしまわないか?

 公判前整理手続において、事件の争点や適切な証拠、証拠の取り調べ方法などが相談され、入念な準備が行われた上で審理が開始される。したがって、審理が不十分であるがゆえの誤審は生まれないと思われるが、逆に、そのシステムでは裁判員が参加することの意義が薄れてしまうのではないかという懸念の声もある。

Q裁判員をマスコミから守る制度はあるのか?

 判決の宣告前は、報道機関に限らず誰でも、事件に関して裁判員と接触してはならない。メールや電話などの手段であっても、裁判員に頼みごとをした場合などは処罰される。判決宣告後も、秘密を知る目的で裁判員と接触することは禁じられている。

Q裁判員に日当は支払われるのか?

 裁判員と裁判員候補者には、日当や交通費、宿泊の必要がある人には宿泊費が支払われる。金額は、裁判員および補充裁判員については1日1万円以内。裁判員候補者については1日8千円以内だが、実際には選任手続は午前中で終わることが多いと予想され、その場合は4千円ほどになると言われている。支払い方法は基本的に口座振込とする方向で検討が進められている。

裁判員制度の課題

裁判員の負担

 かなりの精神的負担を感じる人は多いはずだ。人の人生を左右する決定に責任を持つことに対して、どうしても耐えられないと主張する人も少なからず出てくるだろう。そういった人が裁判員に選任されたとき、その人は審理でのやり取りにきちんと耳を傾け、評議のときにも積極的に話し合いに参加するということができるだろうか。法廷においては、平穏な日々を暮らしているにはおおよそ縁のないような生々しい話が展開され、時には資料として遺体の写真などを見ることになるかもしれない。実際に審理に立ち会ってみて、改めて限界を感じ、途中で投げ出してしまう裁判員が出てくることも大いにあり得るのではないか。

 また、実生活的な負担も大きいだろう。Q&Aでも叙したが、「仕事が忙しい」という理由での辞退申出については、裁判所が個別に判断することになる。ということは、絶対に仕事を抜けるわけにはいかないと強く主張しても、裁判員に選任されてしまうこともあり得るということだ。そのような経緯があり、裁判所に対して一種の悪印象を抱いてしまったとしたら、その人は果たして公正な裁判を行うことに対して前向きになれるだろうか。

 このように考えると、たった6人しか選ばないのであるから、わざわざ嫌がる人を選ぶのではなく、参加に対して意欲的な人の中から選べばいいのではないかとも思えてくる。いざ実施されてしまえば、結果としてそういう人しか選ばれない傾向になることも予想できる。もしそうなれば、消極的な人を裁判所に呼ぶこと自体が無駄になるので、最初から辞退の申請は全て受け入れてもいいはずだ。「原則として拒否できない」ということが、「広く多くの人に参加してもらう」ことに本当につながるのかは疑問である。

形骸化への懸念

リンク集

     裁判員制度(「裁判所」サイト内)

     あなたも裁判員!(法務省によるサイト)